世界中の子どもたちを守るために
麻疹・風疹混合ワクチン製造技術移転 @ベトナム Part2

2018.06.29 World-Mommy 編集部 ライフスタイル

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前回は、麻疹ワクチン・風疹ワクチンにまつわる、ベトナムの国内事情についてお伝えしました。続く今回は、自国でのワクチン製造を望むベトナム政府からの要請を受け実施された、JICA(独立行政法人 国際協力機構)の官民連携での取組みについてお伝えします。

自国製造ワクチンが、ベトナムでの大流行を抑止!

麻疹風疹混合ワクチン製造過程
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その強い感染力のため、数年に1度のアウトブレーク*1が避けられない麻疹。麻疹の流行は、感受性者(免疫がなく感染しやすい人)が少ないほど、感染拡大を食い止めやすくなります。ですから、麻疹の流行時には、流行している地域の感受性者や、感染者と接触する可能性の高い人、例えば、空港や医療機関に勤務する人、教育関係者などに、緊急的にワクチンを接種してもらうことが重要となります。

2014年の東南アジアでの麻疹大流行時、ベトナムでは既に麻疹ワクチンの製造技術が確立されていたので、国内で急遽必要となった大量のワクチンを迅速に製造して、感受性者に接種してもらうことが出来ました。その結果、早い段階で、麻疹の感染拡大を防ぐことが出来たのです。

その背後には、JICA専門家の様々な活動がありました。ワクチン製造という高度な技術移転を支えるだけではなく、積極的なワクチン接種を奨励するためにテレビCMなどに出演して、日本の技術移転による高品質のベトナム国内製ワクチンの安全性やワクチン接種の重要性を呼びかける活動も展開したのです。

「国民健康貢献賞」授賞式
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以上の活動は高く評価され、ベトナム保健省からJICAの専門家5名に対して、ベトナムの医療保健分野に貢献した外国人に贈られる「国民健康貢献賞」が2015年11月に授与されました。

日本が行った協力の過程とは?

日本の支援で建設されたワクチン製造施設
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麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)*2について、ベトナムでの自国製造にいたる過程を振り返ってみましょう。

ベトナムにおけるMRワクチンの自国製造に関する日本の協力は、大きく3つのプロジェクトを経て今に至ります。

①     2002~2006年:日本からの無償資金協力事業*3として実施された、麻疹ワクチン製造工場の建設支援プロジェクト。

②     2006~2010年:製造工場の完成後に実施された、麻疹ワクチンの製造技術移転プロジェクト。北里研究所が開発した、有効性と安全性の高いワクチン製造株(AIK-C株)を用いて、VN-GMP基準*4に沿った麻疹ワクチンを生産する技術指導(技術移転)を実施しました。その結果、2009年からは、国内で必要な麻疹ワクチンのすべてを、国産ワクチンで賄うことが可能となりました。

③     2013~2018年:MRワクチンの技術移転プロジェクト。北里研究所が開発した風疹ワクチン製造株(高橋株)を用いた風疹ワクチン製造技術の移転と、MRワクチンの製造技術移転を行い、ベトナムはMRワクチンを自国製造できるようになりました。

日越両国による協力の成果

一連のプロジェクトでの、北里第一三共ワクチン株式会社の功績は、ベトナム保健省に高く評価され、ベトナムの医療発展に多大な貢献をした個人または組織に贈られる「保健大臣賞」を、2017年9月に授与されました。

自国で製造されたMRワクチンが接種されることで、ベトナムの子どもたちの健康が守られることが大いに期待されます。そして、ほかの疾病に対するワクチン製造はもとより、近隣諸国へのワクチン供給も期待されています。

世界中の子ども達の命が、感染症から守られますように。

*1 アウトブレークとは、急激な患者の増加、病気の集団発生、感染が多発すること。
*2 麻疹(Measles)と風疹(Rubella)ワクチンを混合したワクチン。
*3 無償資金協力とは、開発途上国に資金を贈与し、開発途上国が経済社会開発のために必要な施設を整備したり、資機材を調達したりすることを支援する形態の資金協力のこと。
*4 GMP基準とはGood Manufacturing Practiceの略で、医薬品適正製造基準のこと。品質のより優れた製品を製造するための要件を定めた基準のこと。VN-GMP基準とは、ベトナムの医薬品適正製造基準のこと。

《参考文献》

JICA保健医療タスクニュースレター 「保健だより」第47号 2017年9月29日
JICA保健医療タスクニュースレター 「保健だより」第48号 2018年1月12日
保健医療 JICAの取組み JICA人間開発部 
麻疹風疹混合ワクチン製造技術移転プロジェクトの概要について ODA見える化サイト
「ベトナム、麻疹風疹ワクチン製造が国内で可能に——域内での大流行にも国内製ワクチンで拡大抑制」2016年1月7日
無償資金協力の概要 JICA
「麻しんワクチン製造施設建設計画」に対する無償資金協力について 外務省報道発表 2003年6月24日 
国立感染症研究所 感染疫学センター
風しんについて 厚生労働省
麻しんについて 厚生労働省

【お話を伺った方】

JICA・吉津 智慧  Yoshizu  Chie

 

JICA (独立行政法人 国際協力機構) 人間開発部保健第二グループ3チーム所属(歯科衛生士/社会福祉士、東京医科歯科大学大学院にて口腔保健学修士取得。)ベトナムの保健医療を担当しており、「麻疹・風疹混合ワクチン製造技術移転プロジェクト」の本部主担当。一人でも多くの人々を感染症から守るため、日々業務に励んでいる。

 

独立行政法人 国際協力機構(JICA/ジャイカ(注))は、日本の政府開発援助(ODA)を一元的に行う実施機関として、開発途上国への国際協力を行っています。

(注)JICA/ジャイカはJapan International Cooperation Agencyの略称です。