世界中の子どもたちを守るために
ワクチンの自国製造へ向けて @ベトナム Part1

2018.05.30 World-Mommy 編集部 育児・健康 ライフスタイル

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予防接種は、感染症を防ぐために、ワクチンを接種して免疫を作ることを目的としています。そのため、ワクチンを安定的に供給することが必要とされますが、自国で製造ができない場合、ワクチンの供給は輸入や国際機関等の支援に頼るほかありません。

前回は、予防接種の意味と、世界中の子どもたちを感染症から守るための国際的な取組みについてお伝えしました。今回から2回にわたり、麻疹・風疹ワクチンの自国製造を望むベトナムの国内事情と、ベトナム政府の要請を受けて実施された、JICA(独立行政法人 国際協力機構)の官民連携の取組みについてお伝えします。

麻疹・風疹の予防接種はなぜ必要?

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なぜ、麻疹・風疹の予防接種が必要とされるのでしょう。麻疹と風疹は感染力が強く、また罹った場合も重症化や合併症が怖い感染症だからです。特に麻疹は、飛沫感染*1、接触感染*2に加え、空気感染*3もするので、手洗い、マスクのみでは予防できないことから、予防接種が最も有効な予防策とされています。

麻疹とは
麻疹とは、麻疹ウイルスによって引き起こされる急性の全身感染症です。感染すると約10日後に発熱や咳、鼻水といった風邪のような症状が現れ、2~3日熱が続いた後、39℃以上の高熱と発疹が現れます。麻疹ウイルスは、飛沫・接触感染のほか、空気感染もするため、その感染力は非常に強く、免疫のない人が感染するとほぼ100パーセント発症します。肺炎、中耳炎を合併しやすく、患者1,000人に1人の割合で脳炎が発症するといわれていています。合併症などで死亡する割合も先進国であっても1,000人に1人と言われています。

風疹とは
風疹とは、風疹ウイルスによっておこる急性の発疹性感染症です。高熱や発疹が長く続いたり、関節痛等の症状が現れたりする疾患です。風疹ウイルスは、飛沫感染をしますが、感染力は麻疹ほど強くありません。ただ、まれに合併症を発症するほか、妊娠中にかかると胎児が心疾患や脳性まひなどを引き起こす「先天性風疹症候群」を発症する可能性が高まるため、ワクチンで感染を予防する意義は大きいとされています。

麻疹や風疹は、感染力の強さから数年に1度のアウトブレーク*4は避けられません。例えば日本では、2007~2008年に10~20代の若者を中心に麻疹が流行したことがありました。その理由には、乳児期にワクチン接種を受けていなかったり、たとえ受けていても1歳児の1回接種のみであったりしため、十分な免疫が獲得できていなかったことが考えられます。東南アジア地域でも2014年に麻疹が大流行し、ベトナムでは多くの患者が出ました。予防接種を受けて十分な免疫を獲得しておくことは、アウトブレーク時に麻疹を予防する最も有効な手段といえるでしょう。

現在、日本では、麻疹、風疹の予防接種は、麻疹・風疹混合ワクチンを2回接種*5し、十分な免疫を獲得することが薦められています。特に風疹の予防接種は、乳児のみならず、女性は妊娠前に、また成人男性や妊娠中の女性の家族にも予防接種を受けることが薦められています。

ワクチンを自国製造する意

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ベトナムは、1981年から推進している「予防接種拡大計画(EPI)」により、乳幼児や妊婦に特に深刻な被害を与える麻疹をはじめ6種のワクチン(麻疹、ポリオ、ジフテリア、百日咳、破傷風、結核)を国内で製造する方針を取り、開発や人材育成に取り組む一方、ワクチンの接種率の向上を目指してきました。

以前は、ワクチンの多くを輸入していたベトナム。しかし、予防接種に必要なワクチンの安定的な確保の観点から、国内産ワクチンへの需要が高まっていました。

そんな折、高い技術に裏打ちされた日本の協力のもと、世界保健機関(WHO)基準にも適合したワクチンの自国製造が出来るようになったことで、ベトナム政府は、自国民のワクチンへの信頼回復とワクチンの接種率の向上につなげることができたのです。

次回は、北里第一三共ワクチン株式会社の協力で実施した、JICAのベトナムにおけるワクチン製造技術支援について詳しくお伝えします。

 

*1 飛沫感染とは、咳やくしゃみ、会話などで生じる、病原体を含み一定以上の大きさを持つ飛沫によって感染すること。
*2 接触感染とは、感染源に接触することによって感染すること。皮膚や粘膜などが直接触れあって感染する場合と、病原体が付着したタオルや容器などを介して間接的に感染する場合がある。
*3  空気感染とは、飛沫の水分が乾燥した微粒子が空気の流れによって広範囲に飛散し感染すること。
*4 アウトブレークとは、急激な患者の増加、病気の集団発生、感染が多発すること。
*5 第1期:1 歳児対象、第2期:小学校入学前 1 年間の幼児対象。

《参考文献》

【お話を伺った方】

JICA・吉津 智慧  Yoshizu  Chie

 

JICA (独立行政法人 国際協力機構) 人間開発部保健第二グループ3チーム所属(歯科衛生士/社会福祉士、東京医科歯科大学大学院にて口腔保健学修士取得。)ベトナムの保健医療を担当しており、「麻疹・風疹混合ワクチン製造技術移転プロジェクト」の本部主担当。一人でも多くの人々を感染症から守るため、日々業務に励んでいる。

 

独立行政法人 国際協力機構(JICA/ジャイカ(注))は、日本の政府開発援助(ODA)を一元的に行う実施機関として、開発途上国への国際協力を行っています。

(注)JICA/ジャイカはJapan International Cooperation Agencyの略称です。