世界中の子どもたちを守るために
ワクチン接種の推進・予防接種拡大計画の効果

2018.04.30 World-Mommy 編集部 育児・健康 ライフスタイル

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 赤ちゃんがママからもらう免疫は、胎盤を通じて赤ちゃんに移行するものと、母乳に含まれるものと、大きく分けてふたつあります。母乳に含まれる免疫は、初乳にたくさん含まれることはよく知られていますよね。

予防接種の意味

でも、赤ちゃんがママからもらう免疫は、時間の経過とともに失われてしまいます。それ以降は、赤ちゃんが自分自身で免疫を作って病気を予防していかなければなりません。その助けとなるのが予防接種です。予防接種は、感染症を防ぐために、ワクチン*を接種して免疫を作ることを目的としています。

*ワクチンで感染症を防ぐことができます。しかし、その可能性は低いとしても、副作用のまったくないワクチンはありません。ママやパパもそのことを理解しましょう。ワクチンの評価は、①必要性、②有効性、③安全性の3つを基準になされるのが一般的です。

予防接種拡大計画=EPIとは

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予防接種拡大計画=EPI(Expanded Program on Immunization)とは、世界中の子どもたちを予防可能な感染症から守るための事業です。基本的なワクチンの接種を推進することを目的に、1974年に世界保健機関(WHO)とユニセフが中心となり、世界各国と協働して開発されたプログラムです。

EPIとして主に接種されているのが、当初、5歳以下の乳幼児にとって最も危険な死亡原因であった6種の病気に対するワクチン(BCG、ポリオ、ジフテリア、破傷風、百日咳、麻疹)です。

途上国においても、予防接種は確実に子どもの命を守ることのできる保健医療施策のひとつであり、政治的にも大きな意味を持っています。ですが、ワクチンの供給だけではなく、冷凍冷蔵する設備や搬送体制を完備すること(コールド・チェーン)が欠かせず、莫大な設備投資を必要とするのみでなく、保健医療人材の育成も必要となってきます。

また、「予防接種を受けましょう」と、ただ呼びかけるだけでは予防接種率は高まりません。保護者が、忙しいなか遠方の保健医療機関に健康な子どもを連れていくという、強い動機を必要とするからです。そのため、日を決めて一つの場所に集まってもらい一斉キャンペーンを実施するなど、お祭りのように盛り上げて予防接種をする国もあるほどです。それらの財源は、各国、国際機関、諸団体等が、負担や支援をしています。

EPIの効果は?

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EPIの開始当時には5%だったワクチンの接種率(推奨されているワクチンを接種した子どもの割合)は、1990年には70%に達し、2005年には75%を超えました。2014年には、世界の約86%の幼児が、ジフテリア、破傷風、百日咳の予防接種を受けています。

1988年には1年間に35万人のポリオ患者がいましたが、同年の第41回世界保健総会では、2000年までにポリオを根絶するという「世界ポリオ根絶イニシアティブ(Global Polio Eradication Initiative: GPEI)」が発足しました。

当初の6種類のワクチンに加えて、2006年にはB型肝炎ワクチンの接種が世界164カ国で始まり、104カ国ではヘモフィルス・インフルエンザ菌b型(Hib)ワクチンの接種も始まりました。また、新生児破傷風を予防するために、妊婦に破傷風ワクチンの接種も行っています。

さらに、WHOやユニセフでは、「EPIプラス」という、予防接種時にビタミンA製剤の投与などの母子保健サービスも行っています。途上国では、ビタミンAの欠乏によって、失明の恐れや、欠乏による免疫低下が原因で、マラリア、下痢等の完治するはずの病気で死に至る危険性が高まります(ビタミンA欠乏症)。しかし、5歳までの子どもに、「高単位ビタミンA」のカプセルを毎年2個飲ませるだけで、上記のビタミンA欠乏症を防ぐことができるのです。こうしたビタミンA製剤投与の取り組みが、全国予防接種デーにおいても展開されているのです。

2014年現在、予防接種は推定で毎年200万人から300万人の死亡を防いでいます。

JICAの予防接種プロジェクト

ベトナムのワクチン公社である「ワクチン・生物製剤研究・製造センター(POLYVAC)」製の麻疹風疹ワクチンの接種、日本人第1号です!

国際協力機構(JICA)では、ワクチンの製造・管理、コールド・チェーン管理および安全な予防接種管理に関する研修の実施や、ガイドラインの策定を支援するなど、多くの途上国で「予防接種事業強化プロジェクト」を実施しています。

次回は、EPIを国家プログラムとするベトナムの国内事情と、JICAが実施している、「麻疹・風疹混合ワクチン製造技術移転プロジェクト」についてお伝えします。

 

〈参考文献〉

・「UHCに向けて「最後の1マイル」を行く予防接種サービス」JICA 2017年9月15日事業・プロジェクト https://www.jica.go.jp/project/pakistan/002/news/20170915.html

・『育育辞典』 毛利子来、山田真、岩波書店 2007年

・「途上国における予防接種制度の現状と課題」 中村安秀 海外社会保障研究

Autumn 2015 №192 www.ipss.go.jp/syoushika/bunken/data/pdf/20114703.pdf

・「2015年のニュース 予防接種について」FORTH 海外で健康に過ごすために 

厚生労働省検疫所 www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2015/09080921.html

・「ポリオ根絶に向けた日本の新たな戦略 -なぜ、今ポリオ根絶なのか?−」

一般社団法人ジェイ・アイ・ジー・エイチ(JIGH)2013年10月24日

http://jigh.org/policy_research/500

 

【お話を伺った方】

JICA・吉津 智慧  Yoshizu  Chie

 

JICA (独立行政法人 国際協力機構) 人間開発部保健第2 二グループ保健第3チーム所属(歯科衛生士/社会福祉士、東京医科歯科大学大学院にて口腔保健学修士取得。)ベトナムの保健医療を担当しており、「麻疹・風疹混合ワクチン製造技術移転プロジェクト」の本部主担当。一人でも多くの人々を感染症から守るため、日々業務に励んでいる。

 

独立行政法人 国際協力機構(JICA/ジャイカ(注))は、日本の政府開発援助(ODA)を一元的に行う実施機関として、開発途上国への国際協力を行っています。

(注)JICA/ジャイカはJapan International Cooperation Agencyの略称です。