「かわいい」と言われて
ダウン症児の親の気持ち

2018.04.23 KUMIKO 育児・健康

Photo by Shutterstock.com

ダウン症については、すでにご存じの方も多いと思いますが、本来ならば2本であるべき21番目の染色体が、3本あることが原因で起こる先天性症候群のことです。

私が働いている発達支援センターには、脳の機能障害が原因といわれる自閉症やADHD(注意欠如多動性障害)などの発達障害児とともに、ダウン症のお子さんたちも何人か通っています。知的な遅れやコミュニケーション力不足を補うための療育が必要なためです。

大人の「アイドル」になるダウン症の子

Photo by Shutterstock.com

ダウン症のお子さんは、通っている保育園・幼稚園や療育施設、病院のスタッフの間で、「アイドル」になることが多いようです。なぜなら、この子たちはとっても「かわいい」からです。

「かわいい」理由は、ダウン症ならではの特徴に起因していることがあります。たとえば、

・  人懐っこい

ダウン症の子は、概して人見知りをせず、知らない人に対しても懐いていく傾向があります。攻撃的な言動を取る子供もほとんど見られません。

・  しぐさがかわいい

ダウン症の子には、斜視、遠視、近視など眼に関わる症状を持つケースが多くあります。そのため、ものを見る際に首を傾げたり、対象物の間近まで近寄ってじっと見つめたりと、大人から見ると微笑ましいしぐさをします。

・  やわらかい

ダウン症児は、筋肉量が少なく筋力が弱いので、身体全体がやわらかいというのが特徴です。そのため、手をつないだり抱きしめたりすると、ふかふかした肌触りで、とても気持ちが良いのです。

わが子を「かわいい」と言われてイヤな思いをする親はいない?

Photo by Shutterstock.com

わが子を「かわいい」と言われて、イヤな思いをする親がいるはずはない。子供を持つ人も持たない人も、そう考えることでしょう。

そのため、ダウン症の子と接した大人は、心から感じた思いを素直にその親に伝えるのです。「なんてかわいい子でしょう」と。

日本では今、ダウン症の子供のことを「ダウンちゃん」と呼ぶ人がいます。それは決して蔑称ではなく、とてもかわいいから、そのような呼び名が生まれてきたのだと思われます。

「かわいい」だけでは生活できない

Photo by Shutterstock.com

でも、ここで一度立ち止まって、ダウン症児の親の立場になって考えてみましょう。

ダウン症児の中にも、芸術家として成功したり、大学院まで進んだりという事例がある反面、大半の人は進学や就職で苦労しているのが実態です。親御さんたちのわが子の将来に対する心配は、想像して余りあるほどです。

ダウン症のお子さんは、「かわいい」だけでは生活できないのです。一般の人ならまだしも、私のような発達支援センターで働いている者や、医師、看護師、ソーシャルワーカーなどの専門家は、「かわいい」という褒め言葉が聞く人によっては褒め言葉にならないこともあると、心しなければならないと思います。

【参考文献】

・  『ダウン症児のことばを育てる―0歳から生活のなかで』(池田由紀江、菅野 敦、福村出版)

・  『ダウン症の子どもたち 発達障害児をめぐる涙と勝利の記録』(ヴァレンタイン・ドミトリエフ、誠信書房)

・  『ダウン症のサラ―その成長と発達の記録』(E.D.リ-ツ、誠信書房)