「たてまえ」の理解が難しい、発達障害の子供たち

2018.03.16 KUMIKO 育児・健康

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私が勤めている発達支援センターでの出来事です。リョウ君(仮名)が10歳の誕生日を迎えるに当たり、私たちスタッフはちょっとした催し物を企画しました。もちろん、リョウ君が喜ぶ顔が見たくてしたことでしたが、実際には、まったく逆の結果になってしまいました。

まずはバースデーケーキ。普段のおやつはドライフルーツや豆菓子などの自然食品のところ、その日は奮発してショートケーキを振舞いました。他の子どもたちが夢中になって頬張っている中、リョウ君だけは「生クリームは嫌い」といってまったく手をつけず…。

スタッフが寄せ書きをして作った誕生日カードは、一瞥することもなくカバンの中へ。

人気アニメのキャラクターがあしらわれたプレゼントのシャープペンに至っては、「趣味じゃないので弟にあげる」とのことでした。

予想外の結果に、私たちスタッフは意気消沈してしまいました。でも、すぐに思い直しました。「だからこそ、リョウ君はこの発達支援センターに来ているのだ」と。

当の本人は、本当のことを口にしているまで

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いわゆる「たてまえ」というのをよく理解できないのが、発達障害を持つ人たちの特徴のひとつです。

髪を切った友人に対して「似合わない」と言ったり、「私、きれい?」と聞く恋人に対して「その他大勢と同じ」と答えたり、観劇の感想を聞かれて「何も感じない」と返答したり。このような事例は枚挙にいとまがありません。「本音」がそのまま口から出てしまうようです。

「本音」を言うのは果たして悪いこと?

先のリョウ君も、当の本人は悪気も何もなく、思ったままを言葉や態度に表したまでのことでしょう。でも私たちのセンターでは、子供たちに「一般的な振る舞い」を教えて、周囲の人達と良好なコミュニケーションが取れるよう、社会性を身に着けさせることも役割のひとつです。

リョウ君には、あのような場合、たとえあまり嬉しくなくても笑顔で「ありがとう」と言うものよと話しました。

一方で、「果たして、それがいつも当てはまるものなのか」という思いが、私の頭をよぎりました。

その昔、鮭を丸々一尾もらい、さばくのも大変で往生してしまったことがあります。でも送り主には、「うちは家族みんな鮭が大好きなんです。本当に嬉しい」と言ってしまったため、その後、毎年鮭が送られてくるように…。

はっきり本音を伝えていれば、こんなことにはならなかったはずです。鮭は高価なものなのに、送り主の人にも本当に申し訳ないことをしました。

一般社会で生きるには「たてまえ」も必要

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では、リョウ君のような対応でいいのかというと、やはり一般社会ではなかなか受け入れてもらえないでしょう。結局「加減」とか「塩梅」とかの問題になりますが、これこそ発達障害の人たちがもっとも苦手とすることのひとつです。でも、「一般的な振る舞い」を身に付けることは、発達障害の人の「生きやすさ」に繋がります。

「こんな風に言われると、人というのはこんな感情を持つものだ」ということを、小さい頃から、その都度、気長に教えていくことで、少しずつ身に付けてもらえたらと、日々接しています。

【参考文献】

  • 『壁のむこうへ 自閉症の私の人生』(スティーブン・ショア 学研)
  • 『ボクの彼女は発達障害』(くらげ、ヒューマンケアブックス)
  • 『発達障害の子の「友達づくり」トレーニング 』(有光興記、講談社)