母子手帳プロジェクト @ベトナム Part3
ベトナム版をいよいよ全国展開へ!

2018.02.27 World-Mommy 編集部 ライフスタイル

今回は、全国導入が進められているベトナム版母子手帳の普及について、国際協力機構(JICA)の支援における取り組みを中心に、詳しくお伝えします。

JICA「母子手帳全国展開プロジェクト」

Photo: JICA

JICA はベトナムにおいて、「母子健康手帳全国展開プロジェクト」を、2011年2月から2014年12月までの期間、技術協力として実施しました。ベトナムにおける母子保健の改善を目的とするこのプロジェクトは、まず、異なる地域特性をもつ代表的な4省(ディエンビエン省、ホアビン省、タインホア省、アンザン省)で実施されました。

上記パイロット4省で母子手帳を導入し、実際に使用した経験と効果をもとに、全国へ普及するのに適した「内容」へと改定が加えられました。そして、母子手帳の使用に関するガイドラインの作成や医療従事者の研修、住民への啓発活動等が実施され、ついに、全国標準としての「ベトナム版母子手帳」が完成したのです。

2016年から全国展開へ
日本の民間セクターも支援!

Photo: JICA

本プロジェクトは2014年に終了を迎え「ベトナム版母子手帳」は完成したものの、4省で母子手帳の増刷・配布をしていくには資金が足りません。

そこで、4つの日系企業・NGO(LION、ユニチャーム、味の素、ひまわりの会)から、広告掲載による母子手帳への支援が寄せられ、増刷・配布が可能となりました。民間セクターからの資金調達は、ベトナム版母子手帳の特徴のひとつです。この出来事は、予算確保を課題としていた保健省にとって、大きな励みとなりました。

2016年からは、ベトナム保健省の母子保健局が、全国展開に向けたプロジェクト活動を行っています。また、JICA も、母子手帳の改定および普及のため、省レベルの TOT* 研修(Training for Trainers:トレーナー研修)、モニタリング等の実施を支援しています。

改善された点は? -ディエンビエン省のケース-

Photo: JICA

「全国展開プロジェクト」終了後、母子手帳の普及状況や使用状況を把握するため、ハノイ市、ディエンビエン省、ラオカイ省にて母子手帳の関係者( Reproductive Health Center 及び病院スタッフ、実際に使用している母親とその家族)に、ヒアリングが実施されました。

その中の一つ、ディエンビエン省では、これまで使用されていた予防接種カードや成長モニタリングツールが母子手帳に一本化されたことに加え、近隣省の医療従事者への母子手帳の普及研修の実施等が行われており、母子手帳の普及が効果的に進められていることが確認されました。

ディエンビエン省は、ベトナム北西部にある国内でも最も貧しい地域の一つでもあり、複数の少数民族が居住している地域です。そのため、少数民族独自の言語が障害となり、病院の医療従事者と母親の意思疎通が、それまでの課題でした。

しかし、少数民族の言語と標準語の両方を理解できる村の医療従事者が、母子手帳に産前健診の結果や母親から収集した情報を記載したうえで、それを母親が病院へ持参することで、病院の医療従事者が母子の健康状態を把握できるようになりました。母子手帳が、医療者と母親とのコミュニケーションツールとしての役割を担い、言語の障壁を無くすうえで貢献していることが確認されたのです。

現状と課題 -2017年ヒアリング調査から-

Photo: JICA

2017年8月にディエンビエン省で実施されたJICA職員による現地ヒアリング調査において、全国標準化されたベトナム版母子手帳は、

①医療従事者同士の連絡ツールとして、

②言葉の壁があったとしても医療従事者と少数民族との意思疎通のツールとして、

③家庭によっては、ママが文字を読めない場合に、パパや家族が母子手帳を読むことで情報をママと共有できるという、家族内における情報共有ツールとして、

しっかりと機能していることが分かりました。

一方で、医療従事者の記載はあるものの、妊産婦自身が記載する項目については記載されていないことも少なからずあり、「知識ページ」(妊産婦への必要な情報が掲載されているページ) についても、すべての妊産婦が読んでいるわけではない現状も明らかになりました。

54もの多民族国家であるベトナムには、同様の課題を持つ地域が他にもあり、ディエンビエン省の例をモデルとして、今後、母子手帳を母親と医療従事者のコミュニケーション向上に役立てることが可能となるでしょう。

そして将来、ベトナムのみならず世界でも、母子手帳の普及により、地域性が原因である課題が解決され、母子の健康保健が向上していくことが期待されます。

ママもパパも、どんどん活用していきましょう!

2017年現在、ベトナムで母子手帳の普及を推し進めるJICAの支援活動は、ベトナムの全64省のうち、32省で行われています。

ママと赤ちゃんや子どもたちの健康を継続的にモニタリングできる「ツール」として、ベトナムのママ・パパたちも、「ベトナム版母子手帳」をどんどん活用していきましょう!

<参考文献〉

・JICA「母子健康手帳全国展開プロジェクト」

・『ベトナム国母子健康手帳全国展開プロジェクト』を終えて
~官民連携による持続性確保の取り組み~ 
JICA保健医療タスクニュースレター 「保健だより」第38号

・ディエンビエン省における母子手帳普及の現状 母子と医療従事者をつなぐ母子手帳

・JICAナレッジサイト 母子保健

【お話を伺った方】

JICA・吉津 智慧  Yoshizu  Chie

 

JICA (独立行政法人 国際協力機構) 人間開発部保健第二グループ3チーム所属(歯科衛生士/社会福祉士、東京医科歯科大学大学院にて口腔保健学修士取得。)ベトナムの保健医療を担当。JICA入構のきっかけは、まさに母子手帳であった。母子手帳は、「母と子の成長記録であり、自分がいかに大切に育てられたか」を示すツールとなることに魅力を感じたことが理由である。母子手帳の普及により、地域性に起因する母子保健上の課題が解決され、母と子の健康の増進に貢献できることを期待している。

 

独立行政法人 国際協力機構(JICA/ジャイカ(注))は、日本の政府開発援助(ODA)を一元的に行う実施機関として、開発途上国への国際協力を行っています。
(注)JICA/ジャイカはJapan International Cooperation Agencyの略称です。