母子手帳プロジェクト @ベトナム Part2
標準化に工夫、地方モデルを全国へ!

2018.01.30 World-Mommy 編集部 ライフスタイル

撮影:World Vision, Vietnam

前回は、「ベトナム版母子手帳」の特徴と内容についてお伝えしました。続く今回は、全国導入が進められているベトナム版母子手帳について、国際協力機構(JICA)の支援を受けるに至る経緯についてお伝えします。

積極的な配布はまず地方から!

Photo: JICA

日本発のアイデアである母子手帳。ベトナムでの普及は、1998年、日本のNGO(Non-Government Organization非政府組織)が南部のペンチェ省(ベトナム戦争の激戦地であったメコンデルタの中央に位置)の七つの村で「ベトナム版母子手帳」の配布を始めたことがきっかけです。

当時、脳性まひなど健康上の問題を抱える子どもの治療を行ううえで、妊娠中や出産時に何が起こったのかという生育の記録がないことが問題とされていました。そこで、妊娠中、出産、新生児、小児と継続的なケアを行うことが出来るツールとして、「ベトナム版母子手帳」の配布が始まったのです。

ベンチェ省では、幾度も改訂が繰り返され、母子手帳の省内での普及が積極的に行われた結果、2004年にはベンチェ省の全ての村で、母子手帳が配布されるようになりました。

そんな中、2006年にベンチェ省人民委員会と大阪大学が共催で開いた「第5回国際母子手帳シンポジウム」に、10ヶ国から160名の参加がありました。その中にベトナム政府や34省の保健局代表の姿があったことで、母子保健に関わる多くのベトナム人関係者の間で、母子手帳の有用性と重要性が理解されたのでした。

多民族国家ならではの困難を克服

Photo: JICA

ベトナムでは山岳地帯を中心にたくさんの少数民族が住んでおり、言語によるコミュニケーションや交通手段など、母子手帳の普及には多くの困難がありました。ベトナム北部の山岳地帯に位置するバザン省でもそれらの困難が予想されていましたが、2009年から母子手帳の導入・普及が行われ、実際にここでも母子手帳の有用性が明らかになったのです。

多民族国家ベトナム。人口の85%がキン族、残る15%は53もの少数民族で構成されています。少数民族の人々は、山岳地方や高原地帯に住み、独自の言語を用い文化を形成しています。山岳地帯などの医療アクセスが比較的困難な地方で、母子の健康を継続的に増進するための「ツール」として母子手帳が高く評価されたことが、ベトナムでの全国的な普及へと繋がりました。特にベトナム版母子手帳の効果は、まず、地方である「省」で明らかにされたのでした。

ベトナム政府の要請を受け始動!
JICA「全国展開プロジェクト」

Photo: JICA

ベトナムでは、急速に経済が成長していく中で、政府による保健医療改革や、各国の開発パートナーの援助により、乳児死亡率や妊産婦死亡率などの全国平均指標は年々改善されていきました*。しかし、貧困層や地方住民、少数民族の母子保健の改善が進まないことが、保健省の課題となっていました。
*乳児死亡率  :2000年36.7/1000出生→2010年25.0/1000出生
5歳未満児死亡率 :2000年42 .0/1000出生→2010年32.0/1000出生
5歳未満児低体重率:2000年33.8%→2010年20%未満 

 

もうひとつの課題として、政府機関や各国の開発パートナー等により、独自の冊子やカード、パンフレット等が開発・導入された経緯から、異なる複数の様式が併存していることによる弊害が指摘されていました。多くの冊子は、妊娠期から乳幼児期の健康状態を継続的にモニタリングできないという課題や、複数のモニタリングツールの使用により、かえって医療従事者の業務を増やしたり、母子にとっても紛失しやすかったり、といった混乱が生じていました。

そこで、ベトナム政府は日本へオフィシャルに協力を要請、2011年2月14日から2014年12月13日まで約4年に渡り、JICA「母子手帳全国展開プロジェクト」が展開されることになったのです。

地方に位置する省で確認された「ベトナム版母子手帳」の効果。さて、どのように全国へ普及されていくのでしょうか。次回は、JICA「母子手帳全国展開プロジェクト」について、詳しくお伝えします。それでは次回をお楽しみに…!

 

〈参考文献〉
・JICA「母子健康手帳全国展開プロジェクト」
・JICA保健医療タスクニュースレター 「保健だより」第38号
・JICAナレッジサイト 母子保健

 

【お話を伺った方】
JICA・吉津 智慧  Yoshizu  Chie

 

JICA (独立行政法人 国際協力機構) 人間開発部保健第二グループ3チーム所属(歯科衛生士/社会福祉士、東京医科歯科大学大学院にて口腔保健学修士取得。)ベトナムの保健医療を担当。JICA入構のきっかけは、まさに母子手帳であった。母子手帳は、「母と子の成長記録であり、自分がいかに大切に育てられたか」を示すツールとなることに魅力を感じたことが理由である。母子手帳の普及により、地域性に起因する母子保健上の課題が解決され、母と子の健康の増進に貢献できることを期待している。

 

独立行政法人 国際協力機構(JICA/ジャイカ(注))は、日本の政府開発援助(ODA)を一元的に行う実施機関として、開発途上国への国際協力を行っています。
(注)JICA/ジャイカはJapan International Cooperation Agencyの略称です。